Ken Loach監督作品 Route Irish 2012.09(2010)
英国の社会派映画作家ケン・ローチ(Ken Loach)が監督を務めた、英・仏・伊など5か国共同製作映画である。2010年の第63回カンヌ国際映画祭で初上映された。主演は日本では殆ど知られていない英俳優マーク・ウォマック(Mark Womack )。ちなみに、タイトルの「ルート・アイリッシュ」とは、バグダッド空港と米軍管轄地域を結ぶ12qほどの道で、テロが多発することなどから、世界一危険な道路、として知られているらしい。
時は2007年。主人公のファーガスは、イラク戦争に民間兵として赴いていた幼馴染フランキー(ジョン・ビショップ=John Bishop)の葬儀に参列していた。その場で、ファーガスは知人マリソル(ナイワ・ニムリ=Najwa Nimri)からフランキーが遺したという携帯電話を受け取る。携帯電話に残されたデータを何とか取り出したファーガスは、そこに驚くべき映像が記録されていることを知る。
フランキーは、同じ部隊に所属するネルソン(トレヴァ−・ウィリアムズ=Trevor Williams)が、自分たちが乗る車の後ろにいたタクシーの運転手らを銃殺している現場を撮影していたのだ。フランキーの死について疑問を抱き始めたファーガスは、フランキーの妻レイチェル(アンドレア・ロウ=Andrea Lowe)とともに調査を開始するのだが…。というお話。
基本的にハードボイルドであり、そしてまた『第三の男』を彷彿とさせるダークな陰謀劇でもある。話がやや混沌として分かり難いところもあるのだが、全編にみなぎる怒り、あるいは諦念といったものが、間違いなく観る者の心を揺さぶるであろう良作になっていると思う。さすがに数々の傑作を生みだしてきた老練の同監督。見事な手腕である。以上。(2013/02/28)