Guillermo del Toro監督作品 『The Shape of Water』
カルト的な人気を誇ってきたギレルモ・デル・トロ(Guillermo del Toro)が、飛躍の作品となったPacific Rim(2013)の大成功を経て再びハリウッドから世に送り出した怪獣映画である。周知のとおり、第90回アカデミー賞では作品賞など4部門を受賞。同監督の名を更に高めた作品、ということになる。
舞台は冷戦が影を落とす1962年のアメリカ。イライザ(サリー・ホーキンズ Sally Hawkins)は発話障害を持つ航空宇宙研究センタの清掃員。忙しい毎日を送るある日のこと、同研究所には謎の水棲生物=半魚人が運び込まれ、なにやら物々しい実験が開始される。やがてイライザは、実験により傷ついた「彼」とひそかに心を通わせ始めるが…。というお話。
誠に輝かしい傑作。オリジナルは敢えて作品名は書かないが1950年代の怪物映画、ということになるのだろう。そこからイメージを膨らませ、1962年という監督自身がまだ生まれてさえいない時代を舞台設定にし、周到な考証に基づいて見事に作劇した手腕は特筆すべきものだと思う。
イライザと半魚人という主人公二人の異形性といい、彼らを取り巻くアフリカ系女性、同性愛男性などの存在といい、悪役である白人男性ストリックランド(マイケル・シャノン Michael Shannon)の人物造形といい、結構政治的なメッセージの濃い作品、ということもできると思う。昨今の政治状況下における賞レースでは追い風になったはず、である。(2018/04/20)