森博嗣著『フラッタ・リンツ・ライフ Flutter into Life』中央公論新社、2007.06(2006)

2006年に単行本で刊行された「スカイ・クロラ」シリーズの第4弾を新書化(C★NOVELS BIBLIOTHEQUE)したものである。押井守+I.G.による第1作目『スカイ・クロラ』のアニメーション化が決まっているこのシリーズだけれど、それは措くとして、本作ではクリタ・ジンロウを主人公として、その上司にしてこのシリーズ全体の主人公なりキー・パーソンと考えて良いはずの草薙水素(すいと)が巻き込まれているとあるやっかい事が描かれていく。
既に完結編となる第5弾『クレイドゥ・トゥ・ザ・スカイ』が刊行されているのだけれど、要するに本書はその完結へと向かう間奏曲的な雰囲気を持つ、ある意味物語上の起伏の少ない一冊となっている。とは言いながら、あたかも詩であるかのような独特な浮遊感を持つこのシリーズの文体はここでも踏襲されていて、これはこれで大変有意義な時間を過ごすことの出来た一冊であったことを述べておきたい。
ややネタバレ気味の蛇足だが、本書で明らかにされる重大な事柄について、「女の子の場合はそれで良いとして、男の子の場合はどうなるんだ?」という疑問を持った次第。私自身がこのシリーズで言うところの「キルドレ」みたいなものなのだが(見た目もそうなんだがそれ以上に精神年齢が…、と。勿論良い意味で、なのだが。)、この点は凄く気になったのであった。以上。(2007/08/22)