法月綸太郎著『犯罪ホロスコープ1 六人の女王の問題』カッパ・ノベルス、2008.01

法月綸太郎による本格ミステリ短編6本からなる作品集。タイトルからお分かりになるかも知れないが、元になっているのはエラリィ・クイーンの『犯罪カレンダー』であり、こちらの場合は各編がそれぞれ占星術などでおなじみの黄道十二宮のうちの六つ(牡羊座、牡牛座、双子座、蟹座、獅子座、乙女座)をそれぞれのメイン・モティーフにしている。
一作毎に冒頭で個々の星座と関係するギリシャ神話の解説が行なわれ、導入の役目を果たすという趣向。当然作品の核心部分にも深く関わっていくことになる。個人的には、表題作の暗号もの「六人の女王の問題」、双子トリックの「ゼウスの息子たち」、都市伝説ものの「冥府に囚われた娘」の3作が面白かった。
どの作品も、この作家ならではの論理性を備えているのだが、ギリシャ神話という案外異色な感じの要素を取り入れたことが、全体に華やかさというか、艶やかさを加えているように思う。残り6星座についても早い時期に書き終えて欲しいと思うのは私だけではないであろう。以上。(2009/05/21)