MUSE SIMULATION THEORY
英国の3ピース・ロック・バンドであるミューズ(MUSE)による8枚目のオリジナル・アルバム。エレクトロニック色を前面に打ち出しつつ、さりとて今日の時流ともいうべきミニマルな方向ではなく、徹頭徹尾抒情的でロマンティックなサウンド・スタイルを維持しているのは、このバンドが持つ矜持のなせる業かと思う。商業音楽を語る際にロマン主義、なんてことを言う人はあまりいないかも知れないが、このバンド、やはり基調はロマン主義なんだと敢えて言ってしまおう。そう言えばアルバムにF.ショパン(F.Chopin)の曲を入れていたこともあったわけだし。さて、その今作、中身はタイトルやジャケットからも分かる通り映画Blade Runnerとかその原作者P.K.ディック(P.K.Dick)の小説群あたりからインスパイアされたものではないかと邪推しているが、いかがなものだろうか。実際のところ好き嫌いは分かれるかも知れないが、そのエンジニアリングやらポスト・プロダクションやらがとんでもなく大変だっただろうはずの、極めて意欲的でありかつ「ロマン主義エレクトロニック・ロック」てんこ盛りの作品である。個人的にはザ・キュア(The Cure)のようなテイストの第6曲"Something Human"がお気に入り。以上。(2018/12/05)