Larry & Andy Wachowski監督作品 『スピードレイサー』
『マトリックス』シリーズで知られるラリー&アンディ・ウォシャウスキ(Larry & Andy Wachowski)兄弟が久々に監督をした作品。原作というか原案はタツノコプロが作った日本製アニメーションである『マッハGoGoGo』。プロデューサは『マトリックス』も含む数々のアクション映画を手がけてきたジョエル・シルバー(Joel Silver)。そんなわけで、私としては一応観ておかないといけない作品、ということになるのだが、さて、と。
いきなり脱線させて貰うと、タツノコプロの創業者である吉田竜夫が制作、笹川ひろしが総監督をしていた元々のアニメーション作品が放送されたのが今から40年前の1967-68年で、白黒ではなくカラーだったことに今更ながら驚いてしまうのだが、調べてみれば日本初のテレヴィ向けカラー・アニメーション作品というのは1965年の『鉄腕アトム』だったりするのだ。60年代後半というのは日本においてカラー・テレヴィが普及し始めた時期に当たっていて、そういうテクノロジーの発達と表現スタイルのリンク、というのもアニメーション史を考える上では重要なことなのかも知れない。
話を戻すと、その『マッハGoGoGo』がアメリカではSpeed Racerというあんまり面白味のない即物的なタイトルで輸入放送されかなりの人気を博し、ウォシャウスキ兄弟やらQ.タランティーノやらもこの作品の熱狂的なファンであるらしく、そんな次第で皮算用が行なわれこの度の実写+3DCGによる長編映画の制作となったということになる模様。
正直なところ、『マトリックス』シリーズのようなものを期待すると完全に肩すかしを食らう。良い意味で純粋に子供向けだった、そしてまた極めて良く出来たオリジナル作品を殆どそのまま実写+3DCGで作ってみただけ、というシロモノだと思った次第。これだと、別にこの兄弟が監督をした意味はないのではないかとすら思うのだ。オリジナルから40年も経っているのだし、例えばその間の技術的蓄積(特にゲーム環境の発達は極めて重要な事柄。)を踏まえた色々な趣向などをもう少し入れられなかっただろうか、とやや幻滅を感じてしまった。オリジナルを踏襲したい気持ちは分からないでもないのだが、今時の子供達はこれしきではハマってくれないんじゃないかと思ったりもする。
細かいことを言えば、主人公(スピード・レイサー。エミール・ハーシュ:Emile Hirschが演じている。)とその家族が悪徳企業と対決するという基本的なプロットに一ひねりではなくもう二ひねりくらい欲しかったり、敵レーサ達の人物造形をもっとしっかり描いて欲しかったり、とても重要なキャラクタである覆面レーサX(マシュー・フォックス:Matthew Foxが演じている。)をもっとうまく使って欲しかったり、主人公とその恋人(トリクシィ。クリスティーナ・リッチ:Christina Ricciが演じている。)の関係についてももう少し紆余曲折あってしかるべきじゃないのかな、等々どうにも詰めが甘く色々と注文したくなる作品で、上に書いたような方向性の問題に加え、ちょっと慌てて作りすぎたかな、という印象がどうにも拭えないのであった。以上。(2008/08/16)