Jean-Pierre Jeunet監督作品 『天才スピヴェット』
鬼才ジャン=ピエール・ジュネ(Jean-Pierre Jeunet)監督による、アメリカを舞台としたロード・ムーヴィにしてコメディ映画である。驚いたことに、なんと3Dで制作。使用言語は英語で、原題はThe Young and Prodigious T.S. Spivet。英語圏、フランス語圏での公開は2013年の模様。
天才であるT.S,スピヴェット(カイル・カトレット Kyle Catlett)はアメリカはモンタナ州で両親と姉とともに暮らす10歳の少年。何年か前の弟レイトン(ジェイコブ・デイヴィーズ Jakob Davies)の死から、何となくその関係がぎくしゃくしてしまった家族の中でやや居場所が見つからない彼は、その頭脳により考案した「永久機関」のような装置により、「権威ある科学賞」の授賞式に出席すべく、年齢を偽り、かつまた家族には内緒でワシントンD.C.にあるスミソニアン博物館へと旅立つ。その行く手に何が、という物語。
実にこの監督らしい美術、美しい映像、素敵な音楽に加え、父(カラム・レニー Callum Keith Rennie)、母(ヘレナ=ボナム・カーター Helena Bonham Carter)、姉(ニアム・ウィルソン Niamh Wilson)、博物館次長(ジュディ・デイヴィス Judy Davis)、お馴染みのドミニク・ピノン(Dominique Pinon)等々の何とも普通じゃない登場人物たちが織りなす涙と笑いに満ちたドラマは、この映画を観る全ての人に多大なる感動を与えるはずだ。
ちなみに、この映画の原作はまだ若いライフ・ラーセンというアメリカ人が書いた『T・S・スピヴェット君 傑作集』という本なのだけれど、日本語訳が早川書房から出ているので余裕のある方はお読みになると良いだろう。かなり高価なものではあるが…。以上。(2014/11/25)