Brad Siberling監督作品 Lemony Snicket's A Series of Unfortunate Events 2005.09(2004)

邦題は『世にも不幸せな物語』となっているが、原題を直訳すれば「多くの不幸な出来事」とでもなるだろう。まあ、これではいかにも詰まらなさそうだ。先に紹介した『宇宙戦争』と同じParamount+DreamWorks SKGによる、子ども向きなようでいて必ずしもそうでもない何となく中途半端な感じのエンターテインメント作品で、可もなく不可もなく、といったところ。
原作はレモニー・スニケット( Lemony Snicket )というアメリカ生まれらしい作家が書いた、日本では草思社から『世にも不幸せなできごと』というタイトルで翻訳本が出ているシリーズで、この映画はここから三つほどのエピソードを取り上げて映像化したもの。割と有名らしい原作本は恐らく日本の中学生でも読めるものだと思うので、英語教材として使うのも良いかも知れない、と考えたりもした。
簡単に要約を。両親が火事で死亡したため天涯孤独の身の上となった3人の兄弟姉妹が、その遺産を狙うとある人物が仕掛ける様々な罠を、3人がそれぞれ所有する能力である、「創意」、「知識」、「怪力」で乗り越えていく過程を描く。この三つの能力というのは、おとぎ話や昔話などではおなじみといっても良いもので、こういう古典的手法が今でも世の中に通用するところが面白い、とも思った次第。
毎度の事ながら見事な怪優振りを見せるジム・キャリイ( Jim Carrey )の他、豪華な顔ぶれをそろえたかなりお金のかかった映画で、それなりに見所がないわけでもない。しかしながら、ここでは三つばかり問題点を指摘しておきたい。まず初めに、3人に降り掛かる「不幸」なり「不運」というのは、結局のところ特定の人物が引き起こしている人為的なものに過ぎず、原因や発生源がはっきりしている以上は裁判なり何なりで解決してしまうレヴェルのものだという点。真の不幸とは、災害だの病気だのといった突発的で非人為的なものから引き起こされるのではないかと思うので(要するに本当にどうにもならないもの。)、「こんなの全然不幸じゃないじゃん。」と考えたのだった。まあ、この点はこのシリーズがそういうことを描きたいのではないという気もするのでさほど大きな問題ではない。
次。こっちはより大問題。様々な罠から逃れるにあたっての、上記三つの能力の使い方がもう一つ工夫不足なのがとても気になった。ここがこのシリーズの肝心要な部分なのであって、これをうまく活かせていないのは片手落ちだろう。最後に、主役二人の少年少女が、この役にふさわしい程度に「かわいくない」のが大変残念でありかつ極めて重大な難点かと思う。特に、ゴシック・ロリータっぽい衣装に身を包んだ長女役はどうにもこの映画にマッチしていない。この役柄、思うに別段ずば抜けた美貌の持ち主である必要はないのだが、その見た感じがここまで「野暮ったい」のはどうなのかな、と思う。ちなみに、こういうのは本人のせいじゃなくて選んだ方や衣装・メイク等の担当者が悪い。わざとこういう人選にしたのかも知れないし、そもそも子役選びというのは大変なのだろうと想像するのだが、それでもなお、我々の前には既に『ハリー・ポッター』シリーズという見事な成功例があるのだから、それ位はクリアしないといけないだろう。以上。(2006/01/06)