テレンス・マリック監督作品 『ニュー・ワールド』
原題はThe New World。まあ、そのままです。1973年の長編デビュウから、たったの3本しか映画を作ってこなかった超寡作映画作家による4本目の長編。時は17世紀初頭。ディズニィ・アニメーションの主人公にもなった、ネイティヴ・アメリカンの娘ポカホンタスが、入植した英国人と恋に落ち、波乱万丈の生涯を送ることに、という物語を、超絶極美映像で描いたもの。
余りにも映像が美し過ぎるので一応撮影監督を記しておくと、エマニュエル・ルベツキ(Emmanuel Lubezki)という人。調べてみると分かると思うのだが、過去に意外な作品の撮影監督をしている。でもって、この作品で第78回米国アカデミー賞のシネマトグラフィ部門に、受賞はのがしたがノミネートされていた次第。
さて、この映画は、植民する側とされる側の関係を問い直したりするものではほとんどなく、ほぼ純粋なロマンスなので、その点に物足りなさを感じる鑑賞者も多いのではないか、と思うのだが、それはないものねだりだろう。コリン・ファレル(Colin Farrell)、クオリアンカ・キルヒャー(Q'Orianka Kilcher)、クリスティアン・ベイル(Christian Bale)等が演じる主要登場人物3名により、何とも美しくも正しい人間像が提示され、この3人が紡ぎ出すドラマを、上記の極美映像と、独白(つぶやきに近い。)が多用される独特な味わいのある台詞群をもって展開させることで、映画全体をあたかも詩であるような作品に仕立て上げている。なお、クリスティアン・ベイルの演じる英国紳士は正にジェントルマンの鑑みたいなもので、その容貌の美しさ(ヒゲが何とも似合う。)とともに一見の価値あり、と考えた。
映画を観ることにより、至福の時間を過ごしたい方に特にお薦め。ちなみに、音楽(18-19世紀のヨーロッパ音楽が使われている。)がイマイチだったり、ラストが尻切れトンボだったりという不備はあるのだが、それを補って余りある映像美に圧倒されっぱなしだったため、上映中や上映直後にはそういった瑕疵がほとんど気にならかった、ということを述べておこう。以上。(2006/04/29)