Terrence Malick監督作品 『トゥ・ザ・ワンダー』
ギレルモ・デル・トロ以上に寡作として知られていたテレンス・マリック(Terrence Malick)が、カンヌ映画祭パルム・ドゥ・オル受賞作『トゥリー・オブ・ライフ』の公開から何と1年足らずで発表した長編映画である。マリックは監督・脚本を担当。ヴェネツィア映画祭のコンペティション部門で上映されたが、受賞を逃している。
ベン・アフレック(Ben Affleck)演じるアメリカ人男性ニールとオルガ・キュリレンコ(Olga Kurylenko)演じるウクライナ出身のシングル・マザー、マリーナはフランスのモン・サン・ミシェルで出会い、恋に落ちる。自然な形でアメリカで暮らし始めた二人だが、二人の魂はその取り巻く環境の中で彷徨し始める。そんな二人により添うのはクインターナ神父(Javier Bardem)。彼もまた、自らの道に疑問を抱く一人であり、三つの魂はやがて、というお話。
前作同様に非常に宗教色の濃い作品である。ほぼ会話は存在せず、ひたすら独白によって構成される。圧倒的な映像美、強烈な印象を残すサウンド・トラック、一見無秩序に見えるが周到に計算された演出と編集、そしてまた様々な形で現れるシンボル群等々、いかにもこの監督の作品、といった印象。確かに、これまでの大作群に比べ、一見こじんまりとした佇まいの作品ではあるのだが、人間存在の儚さ・脆さを、透徹した視座から描き出すその手腕には圧倒的なものがある。その円熟振りを示す、佳品である。以上。(2013/09/17)