細田守監督作品 『時をかける少女』 2007.04(2006)
今更、という感じもするのだがようやく観ることが出来た。言わずと知れたという感じの、第10回(平成18年度)文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞、第30回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞等々、数え上げたらきりがない位数多くの賞を貰った細田守監督によるアニメーション作品である。原作はこれまた言わずと知れた筒井康隆による著名な同名小説なのだが、実はこれ、結構古いもので1965年から学研の『中三コース』『高一コース』に連載されていたということを今し方調べて知った。いつの間にかこの作品、色々な意味で完全に角川のものになってしまっていることも今更ながら面白いところ。
さてさて、雑誌連載終了後5年を経た1972年に鶴書房盛光社という今でもあるのかどうか良く分からない出版社から単行本が刊行され、同年のTVシリーズ、1983年の原田知世主演、大林宣彦監督による金字塔的映画化を経て、その後も1997年にさりげなく角川春樹監督による映画化、2002年にはモーニング娘。によるこれまたTVドラマ化などがなされてきたわけだ。これだけ色々な形でのリメイクその他が行なわれてきた中で、いよいよ今では日本のお家芸となった感があるアニメーション化がなされたことになる。
その出来映えはというとそれはそれは大変なもので、さりげなくキャラクタ・デザインを担当している貞本義行は相変わらず良い仕事をしているし、このところ大きな仕事を続けてやってきた定評のあるアニメーション制作会社マッドハウスもシャープさと安定感を兼ね備えた見事な映像を造っている。J.S.バッハから松任谷由実に至るまでの様々な「変奏曲」などなどをちりばめた吉田潔によるサウンド・トラックも素晴らしい。
そして、特筆すべきは何と言っても監督・細田守の力量ということになろう。基本的に東映の人で、1999年に『劇場版デジモンアドベンチャー』で監督デビュウを飾り、その後も数々の優れた作品を世に出してきた彼だけれど、この作品は大林版へのオマージュに満ちた、極めて普遍性の高い青春映画でありかつまたコアなファンにも物足りないことは決してないはずの優れたSFアニメーション作品に仕上がっていて、次回作への期待感のみならず、過去に遡及する必要を感じさせてくれたのだった。以上。(2007/12/06)