Brad Bird監督作品 『Tomorrowland』
タイトルから分かる通りの、ウォルト・ディズニー制作による実写版長編映画である。監督は『Mr.インクレディブル』、『レミーのおいしいレストラン』という2本のアニメーション映画でアカデミー賞を受賞しているブラッド・バード(Brad Bird)。出演はジョージ・クルーニー(George Clooney) 、ヒュー・ローリー(Hugh Laurie)、ブリット・ロバートソン(Britt Robertson)、ラフィー・キャシディ(Raffey Cassidy)他。
宇宙飛行士を夢見る少女ケイシー・ニュートン(ロバートソン)は、ある日私物の中に見覚えのないピンバッチが紛れ込んでいるのに気づく。実はこれ、科学技術が驚異的な発達を遂げた未来都市「トゥモロウランド」にアクセスするためのカギだった。やがてケイシーは、トゥモロウランド、ひいてはこの世界の存亡を左右する騒動に巻き込まれていくのだが、その結末はいかに、というお話。
オリジナルな作品がほとんど作られず、リヴァイバルかシリーズが幅を利かせている昨今のハリウッドだけれど、こういうノン・シリーズものでしかも多大な予算を必要とする作品、というのはその企画自体が結構な賭けだったのではないかと思う。まずはその英断を称賛したい。
さて、作品の中身についてだけれど、要するにディズニー版『20世紀少年』、と言ってしまえば言ってしまえるもの。過剰ともいえる数多のコミック作品への言及といい、更には『万博』が基調になっているあたりにも少なからぬ影響を感じるのだが、深読みだろうか。
結構楽しめたし、その実悪くはない作品だと思ったのだが、難点は結構ある。以下、そのいくつかを挙げておきたい。
その1。中心となるプロットは、世界は間もなく滅びる、最後の希望はケイシーだ、みたいな話なのだが、時代がそこまで悪くなっている、という切迫感がない。これがないために終盤の展開に緊迫感がほとんどない。その点は例えば昨年封切られた快作『インターステラ―』の方がはるかに説得力がある。これがこの作品の最大の欠点だと思う。
その2。トゥモロウランドへの移動、というのがどういう技術なのかがさっぱり分からない。行ったり来たりできるってことはタイムマシンみたいなものが想定されているんだろうけれど、そんな説明あった?例えばタイムマシンだとして、どういう原理で機能するのかが全く示されないのは、今どきの作品としてあり得ることなのだろうか、と考えてしまう。この辺りのディテイルがほぼ捨象されているのが非常に残念。
最後に、やや付け足し気味なのだけれど、ラスボスが余りにも弱すぎる。わざと負けてるんじゃなのか、とも思ったんだが、そもそもそういう話だっけ?実は良い奴、みたいな話なら泣けたかも知れないのだけれど、そういう話でもないのが大変もったいなく思えた次第。
全体として、元々は良い企画だったのだけど、時間と予算の関係で詰め切れなかったとしか思えないところが多々見受けられる作品、と言ってしまえるかも知れない。きっと、これが今日の映画界の現実なのだろう。以上。(2015/06/15)