Wally Pfister監督作品 『トランセンデンス』
クリストファー・ノーラン(Christopher Nolan)の作品で撮影監督を務めてきたウォーリー・フィスター(Wally Pfister)の初監督作品である。製作総指揮にはノーランが名を連ねており、出演は、大スターであるジョニー・デップ(Johnny Depp)、モーガン・フリーマン(Morgan Freeman)、キリアン・マーフィー(Cillian Murphy)等々。こうして見ても一目瞭然な、ビッグ・プロジェクト、である。
ウィル・キャスター(ジョニー・デップ)とその妻エヴリン(レベッカ・ホール Rebecca Hall)は人工知能の研究者。人類の、明るい、そして無限の未来を夢見て研究にいそしむ彼らだったが、ウィルはある日反テクノロジー派の凶弾に倒れ命を失う。
何とかウィルを救いたい一心のエヴリンは、死に瀕した夫の意識を開発中のPINNと呼ばれる人工知能研究用フレームワークにアップロード。人工知能として蘇ったウィル(?)は、ネットワークを介して世界中の軍事から経済、果ては個人情報までをも取り込み、空前の進化を遂げることになるのだが…、というお話。
こんな粗筋をお読みいただくだけでもお分かりなように何とも既視感の強い作品なのだが、まあ、要するに「機械ないしはコンピュータの反乱」もの、と要約できる。『R.U.R.』(1920)がかなり早い時期にそういうことを描いていたし、『2001年宇宙の旅』であるとか、『キャシャーン』なんかもそう。
そういう古典的と言っても良いようなテーマで、この時代に一体何ができるか。なかなか難しいことに挑戦し、人々の理解や賛同を得られずむしろ酷評され、興業的にも悲惨な結果となったこの作品。一体何がいけなかったのだろう?
個人的には、確かに終盤の展開、即ち、物凄く大風呂敷な感じで、しかも、前半のエンジニアリング系SFというかサイバーパンクというか、要は案外『攻殻機動隊』だの伊藤計劃の作品みたいなものに近いんじゃないかと思うテイストを捨て去るかのような、ちょっと安っぽくさえあるメロドラマ化には、さすがにちょっと違和感を覚えたかな、という具合。
要はこの作品、おしまいの方に、良い話だなー、感動的だなー、と思わせたい下心みたいなものが露骨に出すぎていて、この辺が敬遠されたのではないかな、と思うのだが。どうですかね?
映像のセンスとか、セットの作り込みなどにこの監督の培ってきたキャリアとか持ち味がいかんなく発揮されていたりして、実際のところそこまで悪い作品とは思わないのだが、最後まで少しだけでもクールに徹していれば断然良くなったかも、という感は否めないのである。以上。(2014/07/25)