Steven Spielberg監督作品 War of the Worlds 2005.11(2005)

邦題は『宇宙戦争』だけれど、原題を直訳すれば『世界間の戦争』とでもなるだろうか。何だか意味の分からないタイトルだ。そうそう、原題にも邦題にも意味不明なところがあって、この映画は戦争を全然描いておらず、要するにどこかの星から来た者達による一方的な侵略の話。反撃はしているけれど、B29に竹槍で挑むようなものだし、と思ってしまう。映画の中でも名優ティム・ロビンス( Tim Robins )が「これは戦争なんかじゃない、駆除だ。」と言っているのは正しい。
先に記したようにこの映画と今年の春−夏の観客動員合戦を圧勝したStar Warsという映画シリーズも実のところ全く戦争を描いていないわけで(その世界で起きていること自体は戦争だけれど…)、'war'という語の訳はそもそも「戦争」じゃないような気がしてきた。で、調べてみたのだが、この言葉は高地ドイツ語起源の語で、元々は「争い」というような意味だったらしい。ふむふむ、でも、やはりおかしいような。争いというのはある程度力が拮抗しているもの同士の間に生じるものではないのだろうか。この映画で描かれていることが何ゆえに争いなり戦争なりwarなのか、説明出来る人は教えて下さい。
と、どうでも良いようなことを述べているが、この作品は周知の通りS.スピルバーグ( Steven Spielberg )監督が、H.G.ウェルズ( Wells )が1898年に書いたSF古典を再映画化したもの。リメイクである以上は新しい趣向を入れないといけないわけで、スピルバーグらしく複雑な事情を持つ家庭における親子の絆、パニック時に現われる人間の愚かさというか群集心理といったテーマを盛り込みつつ、当然のことながら最新技術による凝りに凝った特殊撮影と特殊視覚効果というようなところに力(というかお金)を注いだ作品となっている。後者について言えば、冒頭から中盤くらいまでのセットは確かに物凄いものがあるのだけれど、話が進む毎にだんだん予算が無くなっていくのが露骨に見て取れてしまうところが玉に瑕かなとも思った。
まあ、それなりに良く出来た映画だとは思うのだが(というより可もなく不可もなく、という感じ。)、いかんせん原作に忠実過ぎて、さすがに今日ではそれはないだろう、というオチだの(大人気ない突込みだが、周到に準備を重ねた侵略なのだから敵さんももうちょっと何とかなるんじゃ、とか…)、上に記した二つのテーマの掘り下げが余りにも浅過ぎるために、単純極まりないパニック映画に堕しているところだのといった具合に、色々な注文をつけたくなる作品でもある。以上。(2005/12/29)