Francis Ford Coppola監督作品 『コッポラの胡蝶の夢』
原題はYouth Without Youth。作品社から出ている『エリアーデ幻想小説全集1-3』の第3巻に入っている、20世紀最大の宗教学者ミルチャ・エリアーデ(Mircea Eliade)による「若さなき若さ」(ちなみに3巻に入っているので1974-1982に書かれたもの。)という小説を、『レインメーカー』以来10年ほどメガフォンをとっていなかったフランシス・フォード・コッポラ(Francis Ford Coppola)が映画化したものである。色々な意味で感慨深い作品。
主な舞台はルーマニア。時はナチスが台頭しつつある1930年代。言語の起源を探る研究に生涯を捧げてきた学者ドミニク(ティム・ロス=Tim Rothが演じている。)が、ある日落雷に遭い、一命を取り留めるのだが、どういうわけか若い肉体と天才的な頭脳を再び得ることに。ナチスに追われる中、かつての恋人ラウラ(アレクサンドラ・マリア・ララ=Alexandra Maria Laraが演じている。)に生き写しの女性ヴェロニカと出会い、再び言語の起源に迫ろうとするのだが…。というお話。
実際にほとんどのシーンはルーマニアで撮影されたらしい。台詞は全て英語である。エリアーデという人の博識振り、そしてまた程良く品の良い怪奇趣味が良く出たお話で、そしてまたあの『ドラキュラ』で遺憾なくその手腕が発揮されていたようにこういうものが本当に得意なコッポラはそれをうまく料理していると思う。
なお、若さ、あるいは永遠を得ることで別の何かを失う、というテーマはアイルランド出身の作家オスカー・ワイルド(Oscar Fingal O’Flaherty Wills Wilde)が書いた『ドリアン・グレイの肖像』(1890)や、最近映画化されたことでようやく日の目を見たやはりアイルランド系の作家フランシス・スコット・フィッツジェラルド(Francis Scott Fitzgerald)の短編「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(1921)などにも通じるものがあるのだけれど、こうして見ると実に実に息の長いテーマなのであることが分かるであろう。以上。(2009/03/25)