Stephen Walker監督作品 『ヤング@ハート』
マサチューセッツ州はノーザンプトン辺りを拠点としてかれこれ25年以上活動を続けてきた平均80歳位のメンバからなるコーラス・グループ=ヤング@ハートの、コンサート前7週間を密着取材した大変優れたドキュメンタリ・フィルムである。老いとは何か、死とは何か、そして何よりもそもそも生きているというのはどういうことか、といったことを深く考えさせられる極めて濃い内容を持つ。そんな傑作を作った監督はスティーヴン・ウォーカー(Stephen Walker)なる人物。どういう人なのか今一つ分からないのだが、優秀であることは間違いない。
ところで、このコーラス隊については、Young@heartの公式サイトを見ると良く分かると思うのだが、元々は1982年に、ノーザンプトンの高齢者向け公営住宅の住民によって結成されたとのこと。ボブ・シルマン(Bob Cilman )という人が音楽監督を務め、多分この人の意向でロックやファンク、あるいはブルーズなど、高齢者コーラス隊としては一見不似合いな感じのレパートリを得意とすることが大きな特徴になっている。
音楽的には「まあ、これはこれで。」というレヴェルのものだけれど、何というのか、やはり年老いてなお音楽にかける情熱というか、「最後に一花」精神というか、というよりそんなものを超えて物凄い毒気を持つ集団で、なんだか圧倒されてしまった次第。
そうそう、レパートリとしてThe Clash、Coldplay、Radiohead、Sonic Youth、Talking Heads、Prince、The Policeなどといった、私も好んで聴いてきたようなものをやっているのもとても興味深く観た次第。そういうところからはちょっとばかり商業主義を感じてしまうところもあるのだが、それはそれで良いではないか、とも思う。台詞にもあるようにショービズなんだし。
まあ、商業的にも成功してしまったこのグループだけが凄いのではなくて、実のところ高齢者合唱団なんてものはこの日本にも数え切れないほど存在する。私の父も入ってます。そこには凄い人が沢山いるのである。そういう事実も知っておいて欲しいかも、とは考えたのだった。以上。(2009/01/20)