2012年9月アーカイブ

私設サイトの書籍紹介欄に、桜庭一樹による江戸もの伝奇ロマン『伏 贋作・里見八犬伝』文庫版を追加しています。

アニメーション映画が公開される模様ですね。でも、これはこれ、それはそれ、なのです。文字の連なりでしか表現し得ないことを表現しようとしている作品なので、これはこれとして是非お読み下さい。

と、云う事で。

去る9/16(日)の夜、横浜の神奈川県民小ホールにて、一柳慧による世界初演となる新作オペラ、『ハーメルンの笛吹き男』を観て参りました。以下、簡単に報告などを。

朝からこんにゃく座を観て、移動しての鑑賞です。風邪の症状がどんどん悪くなっていくタイミングで、凄くつらかったんですが何とか耐えました。

このオペラ、基本的に神奈川国際芸術フェスティヴァルの一環、ということになります。今年で第19回目。神奈川芸術文化財団の芸術総監督が一柳慧であることから、こういう企画になったわけですね。

キャストは、笛吹き男:岡本知髙、市長:三戸大久、司祭:土屋広次郎という3人をメインに、基本的に歌い手は二期会。これに子供達が加わります。楽隊は特別編成のオケ16人。指揮は藤岡幸夫、となります。詳細は下記をご覧下さい。なお、リンク切れご容赦の程。

一柳慧『ハーメルンの笛吹き男』

物語自体はグリム童話などにも含まれている民間伝承ですが、以下、かいつまんで。要は、

時は13世紀末、ネズミの被害に四苦八苦するハーメルンの町にある日笛吹き男が現われ、その駆除のかわりに報酬を頂きたいともちかける。ハーメルンの人々は報酬を約束し、笛吹き男はネズミを笛でおびき寄せ、駆除に成功。しかし、あろうことかハーメルンの人々は報酬を出し渋る。

怒った笛吹き男は一旦町を去るが、再びハーメルンの町にやってくる。しかしながら、今度は人々が教会にいる間に、笛を吹き鳴らしながら子供達を連れ去ってしまう。消えた子供達の行方は、結局誰にも分からないのだった。

という言い伝えです。

この作品はこの伝承を元に、田尾下哲と長尾晃一が台本を作成。全体の流れは同じですが、市長、司祭という端的に権力側の大人を配することや、笛吹き男のキャラクタをオリジナルからかなり距離のあるヒューマニティ溢れるものにすること、あるいはそうしたことから必然的なものとなる結末部の大幅な変更などが行なわれています。

全体として、音楽がとても良かったです。特に小編成オケと岡本、三戸、土屋は本当に素晴らしかったですね。大人も子供も愉しめる作品、というコンセプトだと思うのですが、そこは一柳。一筋縄ではいかない曲であるはずなところを、実に上手く咀嚼・表現しておりました。さすがですね。

ただ、朝のこんにゃく座が余りにも完成された舞台だったせいもあると思うのですが、各演者の台詞と動き、合唱部分、照明等々にはやや未整理なところを感じずにはおれませんでした。狭い舞台に終始かなりな人数が乗っていましたが、そのせいもあったでしょうか。音楽や、作品を貫くメッセージが素晴らしいだけに、ちょっと勿体ない気がしました。

公演は計3回のラスト。今後再演される時は、きっと色々なところが手直しされるんじゃないかな、と思いました。そんな、生まれたばかりの、これから先きっと育っていくはずのオペラ作品に生で、いち早く触れられたのがこの日の収穫でした。

と、云う事で。

去る9/16(日)、六本木の俳優座にて、オペラシアターこんにゃく座による林光追悼公演『森は生きている』新演出版を観て参りました。『ドイツ・レクイエム』明け+風邪かなり悪化、という状態でしたが、前売りを買っていた11時の回を観ました。以下、簡単に報告などを。

9/6から始まっていて、17日までですので、ほぼ終盤です。勿論、最初から全力、なのは分かっておりますが、やはりこういうものは回を重ねる毎に良くなっていくものですよね。本当に隙がないといいますか、非常に洗練された舞台でした。

著名な作品なので知らない人も少ないと思うのですが、簡単に書いておきますと、原作はサムイル・マルシャーク。ソビエト連邦時代の1943年に出版されたもののようです。日本では湯浅芳子による訳が岩波から1953年に出てます。

これを翌1954年には俳優座が初演。1959年からは劇団仲間が上演を引き継いで今日に至ります。オペラ仕様は台本・作曲とも林光が担当して1992年に完成。以来20年間にわたり、こんにゃく座によって演じ続けられている、ということになります。

あらすじはこんな感じです。大晦日の夜、とある国の女王が4月にならないと咲かないマツユキ草を摘んできたものに莫大な褒美を出す、という常軌を逸したお触れを出します。継母の言いつけでマツユキ草を探しにでた娘は、降りしきる雪の中、たき火を囲んで暖まる12ヶ月の精霊に出会い、マツユキ草を手に入れます。継母からマツユキ草を受け取った女王は、家来達を連れてマツユキ草探しに出発。しかし、厳しい寒さと雪のため遭難しかかることになってしまうのでしたが、さて、というお話です。

人間と自然との関係について考えさせてくれる名作であると同時に、端的に権力批判というテーマを内包するこの作品ですが、やはり何と言っても楽曲が素晴らしいですね。最高傑作のひとつではないかと思います。近いうちにスコアを手に入れたいと思いました。

実はこの後横浜に出向いて一柳慧による新作オペラを観ることになるのですが、演者のスタンスにかなり大きな違いがありまして、こちらは兎に角話が良く分かるように、しゃべり、動き、歌う、ということが徹底されていました。20年の時を費やして練り込まれたということになるのでしょう、実に実に、完成度の高い舞台でした。

と、云う事で。

私設サイトの書籍紹介欄に、二階堂黎人による「マジック」シリーズの第4長編、『鬼蟻村マジック』を追加しています。

長野県の寒村。鬼伝説。昭和13年の軍人殺し。旧家の跡目争いを巡って起きる殺人。何ともおどろおどろしくも、端的に横溝正史を彷彿とさせる作品になっています。

さすがに良く出来た本格ミステリ作品だと思いますが、若干の違和感は否めませんでした。テーマが、余りに昭和過ぎる、と言いますか...。

と、云う事で。

去る9/14(金)、15(土)、すみだトリフォニーホールで行なわれておりました、新日本フィルの第499回定期演奏会に出演して参りました。簡単にご報告などを。

演目はJ.ブラームスの『ドイツ・レクイエム』 op.45、でした。カップリングはB.ブリテンの『レズィルミナシオン』。指揮はC.アルミンク、ソリストはソプラノ:リーサ・ラーション、バリトン:ロベルト・ホルツァー、という布陣でした。

フランス公演関係で6-7月は全然練習に出ておりませんでしたので、実質一月半での大舞台でした。最後の方は、あーもっと時間が欲しい、もっともっと時間が欲しい、という感じでしたが。8月は、栗友会自体も他行事多数なため、実際問題として結構やりくりが大変だったのです。

平日の15日金曜日は午後の仕事をお休みして臨みました。リハーサル、ゲネプロで一度も通しをやっておりませんので、全曲通すのは本番が初めてでした。何しろ長い曲です。75分くらいでしょうか。とは言え、やはり一度は通しておきたかったな、というのが本音です。曲の流れが分かることが最重要なので、ピアノでも良かったと思います。

さて、ここ数年、色々な作曲家によるレクイエムを歌い続けておりますがこれがいよいよ最後の砦、とでも言うべきもの(残るはH.ベルリオーズ位?)。余りにも著名かつほぼ合唱が主体ではないかと思うこの曲を、いよいよ今期が最後となるアルミンクが演目として選んでくれたことに心から感謝したいと思います。

個人的には、やや体調が悪くなりつつある中で、最後まで集中力を切らさずに演奏できたことに安堵感を感じています。音楽的にはまだまだやれたことはあったかも知れませんが、やはり社会人の限界を感じたのも事実です。体調管理、時間の管理などなど、本当にきつい一月半でした。

お客さんの入りはまずまず、でしたでしょうか。暖かい拍手をありがとうございました。感想をお寄せ頂けるとありがたいです。

次回本番はG.フォーレ、J.ブラームスに続いて今年3曲目となるレクイエム。今度はG.ヴェルディになります。指揮は上岡敏之、演奏は同じく新日本フィルです。日時は10/13(土)で14時開演。是非ご来場下さい。

と、云う事で。

私設サイトの書籍紹介欄に、東野圭吾による『小説すばる』連載の短編群からなる作品集『歪笑小説』を追加しています。

最初から文庫での登場です。それは兎も角、基本的に出版業界の裏事情、がテーマとなったエンターテインメント作品、ということになります。本当にクオリティ高いです。さすがとしか言いようがありません。

と、云う事で。

直前で申し訳ないのですが、来る9/22(土)の午後から深夜にかけて、神田外語大学及び海浜幕張駅周辺でIrish Culture Festなる催しが行なわれます。セント・パトリックス・デイまで半年、というようなタイミングを祝うようです。詳細は下記に。

Irish Culture Fest in Makuhari

神田外語大学ではアイリッシュ・ラグビーを、駅周辺のアイリッシュ・パブではアイリッシュなミュージック・ダンス・フードを楽しむことが出来る模様です。取り敢えず私はラグビーだけ参加します。

と、云う事で。

私設サイト書籍紹介欄に、歌野晶午による大長編ミステリ『絶望ノート』文庫版を追加しています。

オリジナルは2009年刊です。タイトルからも想像できるように、歌野版『Death Note』になっています。まあ、中身については余り語らないことにしましょう。是非お手に取ってお確かめください。

と、云う事で。

私設サイトの書籍紹介欄に、乾くるみによる日常の謎系ミステリ・シリーズ『カラット探偵事務所の事件簿2』を追加しています。

雑誌の連載を経て、のっけから文庫化です。7作品が掲載されていますが、最後は書き下ろし。この作家らしいなかなかに面白い趣向が凝らされていて、思わずにやりです。取り敢えず、1から読まないと意味が分からないはずなのでまずはそっちを読んで下さい。

と、云う事で。

私設サイトの映画DVD紹介欄に、『猿の惑星』もの映画の最新作にして、新シリーズの端緒となるらしい作品『創世記』を追加しています。

原題はRise of the Planet of the Apesとなります。まさに、起源ですね。

もともとの原作が極めて批評精神に富んだSFだったわけですが、それは見事な形で受け継がれています。ちょっと考えさせられる、そしてホロっとくる、良い感じに仕上がった傑作だと思います。

と、云う事で。

私設サイトの書籍紹介欄に、誉田哲也による姫川玲子もの警察小説シリーズの第3長編『インビジブルレイン』文庫版を追加しました。

映画化が進んでいる模様ですね。来年封切り、でしょうか。タイトルは何故か第1巻のタイトル『ストロベリーナイト』になっていますが、原作はこの巻です。「ストロベリーナイト」シリーズ、ってことになるんでしょうかね。なんか違うと思うんですが(笑)。

誉田哲也はここでも、そのチャレンジャーっぷりを遺憾なく発揮しています。いやはや凄い才能ですね。最早警察小説というジャンル自体を塗り替えつつある気がするこのシリーズ、この先一体どうなっていくんでしょうか。

と、云う事で。

去る8月31日(金)、サントリー・ホールで行なわれておりました、サマー・フェスティバル25周年記念特別公演、ヤニス・クセナキス作、オペラ『オレステイア』を観て参りました。以下、簡単に雑感などを。

まずは基本データ。指揮は山田和樹。二日ほど前に松本でオネゲルをやったばかり、という信じがたいスケジュールです。バリトン独唱は松平敬。ちなみに、オペラとは言っても独唱はこの人だけです。打楽器ソロは池上英樹。殆どが管楽器からなる楽器群は東京シンフォニエッタが担当。基本的に合唱劇なので音楽の中心と言っても良い合唱は東京混声合唱団。児童合唱は東京少年少女合唱隊。演出と美術はスペインののパフォーマンス集団ラ・フラ・デルス・バウス(La Fura Dels Baus)。舞台監督は小栗哲家、といった陣容でした。

曲は3部構成です。アイスキュロスの『オレステイア』3部作が土台になっています。初演は紀元前458年。ここではその原作のあらましをかいつまんで。

その1「アガメムノーン」は、トロイア戦争の勝利のため娘を生け贄としたアガメムノーンが、捕虜として連れられてきたカッサンドラとともにその妻クリュタイムネーストラーに殺されるまでを描きます。

その2「供養する女達」では、アガメムノーンとクリュタイムネーストラーの間に生まれたオレステースが、その姉エーレクトラーとともに、父を殺害した母クリュタイムネーストラーとその情夫アイギストスを殺し、復讐を遂げる過程が描かれます。

その3「慈しみの女神達」では、オレステースを母殺しの罪で告発する復讐女神(エリーニュース)と、弁護するアポローンとの、アテーナーを裁判長とする裁判が行なわれ、陪審員達の意見は真っ二つに分かれたものの、アテーナーの裁きにより無罪となり、激高するエリーニュースはなだめられ慈しみの女神(エウメニデス)へと変わり、世界に安定と喜びがもたらされる模様が描かれます。

クセナキス版『オレステイア』もほぼこれを踏襲しています。ただし、それぞれの役を担う歌手がいるわけではありませんし、全編がさほど演劇的ではないので、予備知識がないと何だか分からないんじゃないかと思います。字幕は殆ど見えませんでしたし。

まあ、兎にも角にも大変な舞台で、圧倒されました。舞台装置、衣装、照明、音響、プログラミング等々、めくるめくというか何というか。ラ・フラ・デルス・バウスを始めとするスタッフの皆様、お見事です。

音楽もまた凄まじいもので、特に一人多重録音で名を馳せている松平敬による、女声・男声を交互に切り替える歌唱はそれはそれは見事なもの。更に特筆すべきは打楽器群で、シンフォニエッタの皆さんも素晴らしかったのですがソロの池上英樹による神がかったパフォーマンスには驚嘆を禁じ得ませんでした。

そんなところです。最後になりますが、諦念に満ちた悲劇であると同時に祝祭性も十二分に孕んだこの複雑極まりないレパートリーを、うまく消化・整理し、色々なアイディアを盛り込んで何とも躍動感ある舞台に仕立て上げた、関係者の皆様には、惜しみない賞賛の意をここに表しておきたい、と思います。

と、云う事で。

私設サイトの映画紹介欄に、巨匠リドリー・スコットによるSF超大作『プロメテウス』を追加しています。

基本的に『エイリアン』の前日談ですが、『エイリアン』そのものなところも多々あります。そういうのってどうなんだろう、と思いました。シリーズの中の1本なのか、独立した作品なのか、ちょっと判断が付きかねる、中途半端な作品に思えました。ちなみに、どういう意図があるにせよ、これ一本で興行的にある程度成功しないと、続編を作るのは難しいと思うのですが...。

と、云う事で。

私設サイトの書籍紹介欄に、山口雅也による「講談社ミステリーランド」の一冊『古城駅の奥の奥』文庫版を追加しています。

東京駅も丸の内側の改築というか再現工事がいよいよ完了しますね。いやー、長かった...。実に巨大な建築物である東京駅ですが、長い歴史を経てきていることは言うまでもなく、もはやその存在自体がミステリな気がします。本書は、そんな東京駅を舞台にした、ちょっとダークなミステリ作品です。

そんなわけで本書は、ミステリ・ファンは勿論、鉄道ファンの皆さんにも是非お読みいただきたい1冊です。恐ろしくロマンティックな、そしてまた色々な意味でこの作家にしか書き得ない作品だと思います。

と、云う事で。