「聖地巡礼の観光人類学的考察−宮城県仙台市の宗教法人・大和教団を題材として−」『観光産業』第19号、2002年3月
本稿では、観光人類学において重要なテーマとして頻繁に扱われてきた聖地巡礼に関し、宮城県仙台市に本拠地をおく宗教法人・大和教団が行なっている二つの事例を紹介しつつ、考察を加えた。観光人類学では観光と巡礼の境界が曖昧なまま研究が進められてきた、という論者がいるのだが、ここでは基本的に世俗的な行動である観光を宗教行事の中に取り込んだ参加者の大部分が一般信者である「出羽三山登拝」と、世俗的要素を忌避しつつ行なわれる聖性の強い行事である教師レベルの参加者が多数を占める「みそぎ大行」という二つの行事を比較しつつ、観光と巡礼とを方法論上一旦分離することにより、ある教団が観光を教勢拡大のために、そしてまた巡礼を教団としての意識の高揚ないしは存在意義を確立すべく戦略的に使い分けていることを浮き彫りに出来ることを示した。