王家衛監督作品 2046
満を持して発表された王家衛監督の最新作。内容からして『花樣年華』の続編に当たることになるのだろうけれど、その描写に関してはあの恐ろしく禁欲的な作品に対して殆ど対極的と言って良いほど抑制の外れたものとなった。
でもって、いつもながら評価の難しい同監督の作品であるのだが、個人的には確かに見所は多いかも知れないがやや無駄が多すぎるかな、という印象を持った次第。
即ち、前作でスー・リーチェン(張曼玉)と別れた作家チャウ・モウワン(梁朝偉)が、近未来官能小説『2046』を2047号室で執筆し、隣の2046号室に越してきた娼婦バイ・リン(章子怡)と激しくも切ない恋に落ちる、という物語の全体構造は「良くもまあこんなことを思いついたものだ…」というくらいのインパクトを持つものだし、相変わらずの画面構成や色彩感覚の先鋭さにはやはり目を見張るものがあるのである。
とは言え、チャウとバイ・リン二人の話で殆ど完結させてしまっても良いものを、鞏俐だの王菲を出演させて話を散漫なものにしてしまったのは、どうかと思う。後者については『2046』絡みでまあ必要なのかも知れないが、前者を巡るシンガポールでのエピソードはどう考えても要らないだろう。
とまあ、やはり評価の難しい作品だけれど、取り敢えずは王家衛の造り出したこれまでの作品群の集大成内容を持つことは間違いなく(だからこそ<散漫>なわけなのだけれどそれは措くとして)、その曰く言い難い世界を堪能することは可能なのであり、ごく私的にはそういう観方で良いのでは、或いは最良なのではないかな、などと考えたのであった。以上。(2004/11/18)