Richard Morgan著 田口俊樹訳『オルタード・カーボン』アスペクト、2005.04(2002)
この作品でP.K.Dick賞を受賞した、ロンドン生まれの作家・Richard Morganのデビュウ作にして、27世紀を舞台としたハード・ボイルドなサイバー・パンク大作である(本人は「フューチャー・ノワール」と命名しているらしい。)。
外部記憶により意識を身体から分離して保管することが可能になった世界。それは図らずも、肉体の死が必ずしも個人の死にはならない、ということを意味する。勿論それにはコストがかかるので、そういう恩恵に預かれるのはお金持ちに限られる、という設定の下、とあるセレブが自らは「殺人」であると主張する謎の「自殺」を遂げる。本作品は、その捜査のためにそのセレブによって召還された元特殊部隊出身のタケシ・コヴァッチなる主人公による波乱万丈の活躍により、驚くべき真相が明らかになっていく過程を描く。/dd>
数多のサイバー・パンク小説・映画その他がその予想図を描き出して来た未来の電脳社会に新しい要素を加えつつ、Raymond ChandlerやDashiell Hammett、ひいては村上春樹にまで連なるハード・ボイルド小説群への傾倒振りを露骨に示しつつ、最初から映画化を予想して作りこんだのではないかとさえ思えるアクション・シーン満載の見事な作品に仕上がっている。これは今日における必読書の一つだろう。以上。(2005/05/01)