Inda, Jonathan Xavier & Rosald, Renato (eds.) the anthropology of globalization Malden(Massachusetts) : Blackwell Publishing, 2002
本書は、ここ10数年ほどの間に書かれたグローバリゼーションに関する人類学者達による論文を編者のJonathan Xavier Inda と Renato Rosaldが集めたアンソロジ。ということは、冒頭のこの二人による序文‘A World in Motion’のみが書き下ろしで他の論文は全て既出(キシュツと読んで下さい。)のもの。
掲載された論文の書き手はその多くが何となく見知った方々であるし、それらの文章はこの分野を扱っている研究者にとってかなり有名なものばかりだと勝手に考えているのだが、それは兎も角、そこに通底している視座・視点・現状認識の有り様はと言えば、次の通り。
確かにグローバリゼーションなり地球化と呼ばれる現象は今日確実に進行しているのだけれど、それは単にアメリカ合州国産、あるいはヨーロッパ産の文化や社会制度が世界中に拡がっていくプロセスではない。反対に世界各地から欧米に持ち込まれる文化や社会制度も存在し、あるいは欧米以外の場所同士の間でそれらが流通するような現象もある。そしてまた、進行するグローバリゼーションに対抗するような思想も各地で生まれてきているわけであるが、それらも欧米以外の地域においてと同時に、欧米諸国においても頻繁に見出されるという複雑な様相を呈している。
それでもって、要するにそのようなことは、実は欧米も含む世界各地に散らばってフィールド・ワークを敢行してきた人類学者がつぶさに観察してきたこと、あるいは観察し得たことなのであり、そうであるからこそ圧倒的な具体性をもって書かれた本書掲載の論文群は、「グローバリゼーション」という想像以上に複雑なプロセスを理解する上で必読のものばかりなのではないかとさえ考える次第である。
以上、ごく簡単に紹介まで。(2003/07/03)