E.E. Evans-Pritchard著 向井元子訳『アザンデ人の世界 妖術・託宣・呪術』みすず書房、2001.01(1937)
20世紀半ばの全盛期英国社会人類学を担った一人でもあるE.E. Evans-Pritchardが、アフリカ大陸の中央部に住む、アザンデ社会における妖術・託宣・呪術に関し、綿密なフィールド・ワークに基づいた記述・分析を行なった余りにも著名な文献の初完訳版である。
人の死を含むあらゆる不幸な出来事が、全て「妖術」ないしは「呪術」によるものと考えられている社会における、妖術師を探し出し告発するための「託宣」、そしてまたその妖術に対抗するための呪術等々、誠に巧妙にその呪術・宗教体系が組みあがっている様を、著者は卓抜な筆致で描ききる。
妖術と呪術、あるいは邪術と妖術の区別をはっきり付けたのが、本書であることは周知の通りだけれど、こういういわば人類学における基礎知識をより正確に把握しておくためには、12,000円(税別)は決して無駄ではないと思う。以上。(2002/07/16)