Mircea Eliade著 奥山倫明・木塚隆志・深澤英隆訳『世界宗教史 8 諸世界の邂逅から現代まで(下)』ちくま学芸文庫、2000.10
とうとう完結、例によって紹介のみ。
山田正紀著『阿弥陀(パズル)』幻冬舎文庫、2000.10(1997)
『妖鳥(ハルピュイア)』、『螺旋(スパイラル)』(以上、幻冬舎文庫)に続く、1997年刊行の本格ミステリ。『螺旋』の謎解き役、風水林太郎の妹・風水火那子が初登場する。この両名の命名に関し、解説を書いている千街晶之は、「風林火山」のうち三つが出てきたので、次は「山」が云々、と述べているが、それは甘いでしょう。私の見方では、「風水」は切ってしまってはいけない言葉で、続いてここから陰陽五行説を連想し、「林」は分割して「木」、そして「火」と並べるわけです。そう、まさしく木火土金水なのだから、次に出てくるのは「土」関係の名。以下、「金」、「水」と続く、と。どうなんでしょうね。尚、中身は前2作と打って変わったコミカルでさえある純粋パズラーです。今となっては懐かしい「たまごっち」ネタについては間違いを指摘出来るのだけれど(電池が切れたらデータは消えます。)、本当によくぞここ迄アイディア盛り沢山の作品を短期間に発表出来るものだと、つくづく感心してしまうのでありました。(2000/11/03)
麻耶雄嵩著『メルカトルと美袋のための殺人』講談社文庫、2000.8(1997)
全7作からなる短編集。麻耶としては珍しいとも言いうるごく普通の作品が並ぶ。「ごく普通」というのは、「変格」や「メタ」や「アンチ」に走っていない、という意味である。それはそうと、この人の文章力には今更ながら感銘を受ける。工学部出身者を甘く見てはいけないとつくづく思う。尚、「美袋」は「みなぎ」と読む。ATOK13の辞書にもちゃんと入っている。(2000/11/06)
小松左京著『ゴルディアスの結び目』ハルキ文庫、1998.4(1977)
同氏の絶頂期の連作短編集である。S.Lem的テイストが味わえる傑作「ゴルディアスの結び目」をはじめとする4作は、いずれも時間・空間・宇宙・人間その他についてのそれなりに深遠なる思索を巡らせたもの。娯楽性の極めて薄いSF小説が(本作にそれなりに影響を及ぼしているであろう当時のハードSFの第一人者H.Elisonに言わせれば「思弁的小説(speculative novel)」ということになるだろうか。)、当時絶大な人気を誇っていた小松氏によって書かれていたこと自体が興味深い。今日こういうものを書きうる作家も、読みうる読者も、大変稀少になっていることは間違いないのだけれど(それ故に、旧作を発掘する他はない、ということだ。)、角川春樹事務所の努力が実ることを祈る。
竹本健治著『クー』ハルキ文庫、2000.9(1987)

竹本健治著『鏡面のクー』ハルキ文庫、2000.10
2冊まとめる。前者が再刊されたのも驚異的だけれど、それ以上に驚くべきなのは前者の続編である後者が13年の歳月を経て書き下ろされた、という事実である。前者の著者あとがきには、本作品群は第3作を以って完結する旨まで記述されている。正直言って、第1作である『クー』は単なるB級SF・エロティック・超能力美少女もの・アクション小説に過ぎず、第2作にしてもそれは殆ど変わりない(主人公は決して少女ではないのだが…。まあ、いいでしょう。)。しかし、第1作で既に登場していた「救世の科学」なる宗教集団モドキが推進する人類進化のヴィジョン(当然のことながら「ヘーゲル的」です。)の提示と、実はその鍵を握るのが主人公・クーの特殊能力なのである、というコンセプトが結び付いて、話は一気にハードSF化する。そこでは、クーv.s.クローン・クーによる、身体性v.s.精神性対決までが行なわれているのだ(こうしてみると、「鏡面の」という語から、本書を手に取った瞬間に基本的にヘーゲリアンであるJ.Lacanの「鏡像段階」という言葉を思い出してしまった私は正しかったようだ。)。何やら、筒井康隆の「七瀬」シリーズの如き展開を示し始めているのだが、私個人としては、本当に刊行されるかどうかすら怪しい第3作において、同シリーズを見事に乗り越えることを期待したい。(2000/12/17)