Francis Lawrence監督作品 Constantine
本作品は、Keanu Reeves主演によるタバコ撲滅プロパガンダ映画である、というのは、多分冗談ではなく本当の話。だと思う…。
Reeves演じる主人公John Constantineは肺ガンで余命幾ばくもないエクソシスト(祓霊師)。我々が住む人間界は、対立関係にある悪魔族と天使達のそれぞれが住む地獄と天国の緩衝地帯みたいなものだ、という世界観のもと、人間界を手中に収めようして暗躍する悪魔族とConstantineとの壮絶な闘いを描く。
日本に住む私達としては、『デビルマン』だの『悪魔くん 千年王国』(これらの作品の方がこの映画より遥かに面白いんだが、まあ、それはいいか…。取りあえずの必読書である。)のような優れた作品を通してユダヤ・キリスト教的世界観をある程度理解している訳だけれど、本映画の舞台設定だの言いたいことだのも、大体そのような感じで割合すんなりと理解出来る。山田正紀が最近書いた『神狩り2 リッパー』(徳間書店、2005.04)などは、こういう舞台設定に一応の科学的根拠を与えてしまったとんでもない作品なのだが、是非ご一読を。
まあ、いずれにせよ、この映画で表現されているのはかなり通俗化されたオカルティズムだな、とは思った。基本的に本作品はCGを駆使したアクション映画な訳で、ユダヤ・キリスト教の思想をかなり衒学的な形で表現した傑作『薔薇の名前』(出来れば映画版よりも分かり易い原作小説をお読み下さい。)みたいなものとはその製作意図そのものが全く異なっている、ということである。
とは言いながら、少なくとも、この作品が長編デビュウとなるFrancis Lawrence監督の力量はまずまずのものだし、何と言ってもこれまでに膨大な数の映画を撮ってきた撮影監督Philippe Rousselot(正しくはPhillippe?と思ったらこっちは息子らしい。)のキャメラ・ワークは素晴らしいの一言に尽きる。正直、後者だけでも充分に劇場で観る価値はある。映像だけ見れば、同じく天使が活躍するWim Wenders監督による不朽の名作『ベルリン天使の詩』(Der Himmel uber Berlin。uはウムラオト。撮影はHenri Alekan。)に匹敵していない事もない、ってそんな訳はないな。例えばJean-Jacques Beineix監督の幾つかの映画には近いと思うのだが、この人のキャリアを考えるとそれは当たり前かも知れない。
やや単純かつ大味な物語で、話の持って行き方にもう一工夫欲しかった映画だけれど、取り敢えず可もなく不可もなく、という事で評論を終える。(2005/05/24)