山田正紀著『神狩り2 リッパー』徳間書店、2005.04
30年前に奇跡的な作品『神狩り』でデビュウを果たした山田正紀が、作家生活30周年を記念して書き上げたSF超大作である。いやはや、実に面白かった。
まあ、読んで頂ければすぐに分かることであるし、作者自身も自覚的にそれをやっているのだから敢えて書いてしまうならば、これは明らかに『マトリックス』(The Matrix)シリーズの日本的ないし山田正紀的翻案、ということになるのだろう。
ストーリーはとても込み入っているのだけれど、要するに我々が生きている、あるいは生きていると認識している世界というものが、実は「神」なる存在が自らの存在なり何なりを隠蔽するために造り出した虚像なのであり、それを暴き出すべく活躍する、『神狩り』第1弾の主人公・島津圭助とその後継者達の活躍が描かれる。
ここ10年位にわたる著者のキャリアを圧縮したような内容を体現させつつ(キリスト教へのこだわり、その他…)、一部には具体的な書名さえ出てくるP.K.Dickの作品群と同じようなテイストを醸し出しつつ(これは「リップ・スティック」というアイテムに端的に現れているのだが…)、更には笠井潔の影響なのだと思うのだがM.Foucaultの思想(特に『監獄の誕生』に描かれたような…)をその根幹に据えるという荒業を成し遂げた、これまたある意味奇跡的作品を、是非ともご一読のほど。(2005/04/15)