篠田節子著『コンタクト・ゾーン』毎日新聞社、2003.04
今日における最も重要なエンターテインメント作家の一人である篠田節子による、直木賞受賞作『女たちのジハード』の「続編」的冒険活劇にして、ほとんど戦争小説。
舞台は東南アジアのリゾート地「バヤン島」。当該リゾート島を含むとある国家の政変による通貨暴落を好機とみて現地入りした30代後半の独身女性3人が、同島の独立運動やら、イスラム原理主義勢力の勃興やら、政府軍やらによる交戦に巻き込まれ、したたかに生き延びていく姿を描き出す。
人類学者・栗本英世などの指導によって描き出された、現地の生活習慣、社会構造、複雑な政治・経済状況の描写は大変優れたものだと思う。篠田節子はこの作品によって、池澤夏樹と並び、近代化なり開発なりがさまざまな形で進む開発途上国におけるもろもろの問題点を見事な形で描きうる作家の一人となったように思う。
まあ、紛争に巻き込まれ数多くの人が死んでいく中で、主人公3人が何とか生き延びてしまうハッピー・エンドには安直さを感じないこともないのだが、それはそれで、よろしいのではないかとも思う。ということで。(2003/10/21)