吉見俊哉著『カルチュラル・スタディーズ』岩波書店、2000.09
最早、「カルチュラル・スタディーズ」という、わざわざ日本語に直さないで使っている言葉にあえて何らかの説明を加える必要がなくなってしまった昨今だけれど、本書についてはむしろ〈狭義〉の、すなわちR.ホガードとR.ウィリアムズを嚆矢とし、英国の特にバーミンガムという大都市(私には大英帝国の「周縁」とは思えません…。)で形成された〈カルチュラル・スタディーズ〉のリヴュウを行なったもの、という位置づけが著者自身により行なわれている。というようなわけで、本書はあくまでも先行研究のリヴュウを目指したにとどまっていることも確かで、そのために極めて理屈っぽく読みにくいことは措くとして、例えばもっと小さな具体的対象についての、狭義の〈カルチュラル・スタディーズ〉的視座からなされる考察みたいなものの序論のようなものとしてしか読めないのだけれど、それでも大変勉強になったのは事実である。ちなみに、巻末の「基本文献案内」には私が所有してすらいない(当たり前だけどね。)書物が多々挙げられていて、とてもありがたいと同時にまたまた宿題も増えてしまったのであった。以上。(2002/06/29)