大瀧啓裕著『エヴァンゲリオンの夢 ―使徒進化論の幻影―』東京創元社、2000.8
刊行予告から2年以上を経てようやく出版された同書であるが、忙しいので、とてもではないが読んではいられない。しばらく封印である。ということで、きちんとした書評は年末位になると思う。まあ、それはそうとしても、パラパラとめくっただけで、礒山雅の傑作『マタイ受難曲』(東京書籍、1994)を髣髴とさせる<テレヴィ版一話毎の分析>形式といい、小谷真理への当てつけとしか思えない一切の画像の排除(唯一の例外は最終頁のイラスト。これは同氏による『ユリイカ』連載のコラム「幻想通信」でも用いられている。引用元は全く分からない。)といい(ついでに言えば、以前に私も指摘した小谷における<キリスト教側から見たグノーシス主義観>の問題点は、当然の事ながら本書でも言及されている。)、予想通りのP.K.Dickへの言及といい、税抜3,400円という値段といい、上下二段組430頁の圧倒的なヴォリュームといい、等々切りがないので止めるけれど、誠に色々なことを考えさせられる書物なのであった。しかし、429頁に「かくして二年余の歳月の大半はヴィデオ鑑賞に費やされ、一部のヴィデオはノイズだらけのものになりはててしまった。」なんて事をお書きになっているのだが、LDもDVDもとうの昔に出ているのに(序でに言うとCD-ROMも。)、と詰まらぬ事を思ったりもするのであった。大瀧さんともあろう人が、そういうものを持っていないはずはないのに…。(2000/08/19)