Elia Suleiman 監督・主演作品 D.I. : Divine Intervention
渋谷はユーロ・スペースにて鑑賞。首都圏ではここでしかやっていないので…。それは兎も角、この作品は私が生まれて初めて観た「パレスティナ映画」ということになる。まあ、監督・主演している Elia Suleiman 氏は「イスラエル国籍のパレスティナ人」という複雑な立場にあるようだし、本作品は実際のところフランス共和国と「パレスティナ」の合作で、更にはパレスティナは現在自治政府は持っていても国家としては認知されていないようなので(要確認だが…。)、これを敢えて「パレスティナ映画」といってしまうのも何だとは思うのだが、まあ、良いか。
「まあ、良いか」、というのもこの映画、あの私から見ればどう考えても世界で最も政治的にややこしい紛争地帯であるイスラエル国とパレスティナ自治区をまたにかけた「恋愛コメディ」なのである。映画の中では様々なことが描かれるのだが、話の要(かなめ)はイスラエル国側である東エルサレムに住む主人公男性と、パレスティナ自治区はラマラに住むその恋人の女性が、両地域間に存在する検問所近くの駐車場でしか逢うことができないという状況下で、その検問を様々な手段で突破する様を面白可笑しく描いたもの、となるのだろう。余り政治的な事柄にこだわるのも、製作者の意図と逆行することになりかねず、結局のところ「まあ、良いか」、となるのである。
何が可笑しいのか良く分からない部分も多々あったし、明らかに私からすれば「外している」ネタもあって、実際問題一緒に観ていた観客達もあんまり笑っていなかったのだが(苦笑がやっと、という感じですな…。)、この作品がコメディを意図したものであることだけは了解できた。取り敢えず、本映画では近日中に日本国内でも続編が公開されるThe Matrix のあからさまなパロディが行なわれているのだけれど、過酷な状況に置かれた紛争地帯とはいいながらアメリカ合州国製のエンターテインメント作品をギャグのネタにできる程度の「余裕」はあるのだな、などと感慨に耽った次第。もちろん、こういうことを述べるためには自治区内で上映がなされて、更には「受けた」ことが前提となっていなければならないのだが、これは果たされたようだ。なお、このような形で世界の至る所と同様にこの地域にもアメリカ文化は大量に入り込んでいるようなのだけれど、どうやら本田技研や三菱自動車工業製の自動車が結構走っているらしいのもなかなかに興味深い点であった。
最後になるけれど、本作は2002年度のカンヌ国際映画祭で国際映画批評家賞最優秀作品賞、正式コンペでの審査員賞を受賞。確かにそういう賞をとるだけの完成度とインパクトを持つ作品であることは間違いない、とだけ述べて終わりにする。(2003/05/20)