中沢新一・鶴岡真弓・月川和雄編著『ケルトの宗教 ドルイディズム』岩波書店、1997.12
大分前に出た本だけれど、許容範囲内ということで掲載する。「ドルイド」乃至は「ドルイディズム」そのものを扱った学術的な書物というのは日本国内では他に見当たらないので(ゲーム攻略本みたいなものはあるのだけれど…。)、稀有な存在であると思う。有名なS.PigottのThe Druids1968も本書の刊行時点では邦訳書が出ていなかった事になる。(同書については本年講談社から鶴岡真弓訳が出ています。現在取り寄せ中。)さて、本書はギリシア・ローマ時代から近代までの文献資料を駆使し、ヨーロッパにおける「ドルイド」像、或いは「ドルイディズム」の形成、変容を丁寧にトレースしている。そう、「ドルイディズム」とは結局の所、ヨーロッパの人々が自画像を描く際に必要不可欠なものとして見出され、創り出され、変容させられた外なる他者イメージ乃至内なる他者イメージの事なのである。なお、私が本当に知りたいのは近年の「ドルイド・リヴァイヴァル」とも言われる現象についてなのだけれど、そこ迄筆は及んでいない。写真は掲載されているのだが…。残念である。尚、編著者の頭に中沢新一の名があるけれど、付け足しのようなテクストしか投稿しておらず、これを削ってしまえば3,000円以下に出来るのに、と詰まらぬ計算をしてしまったのでした。鶴岡真弓の名前で十分売れるように思うのだけれど…。(2000/03/13)