Gus van Sant監督作品 Elephant 2004.12(2003)
2003年度のカンヌ国際映画祭でパルム・ドゥ・オルと監督賞の両方をかっさらった作品。監督は『マイ・プライヴェート・アイダホ』(My Own Private Idaho 、1991)などで知られる、アメリカ映画界では珍しく商魂を表に出さない優れた映画作家であり、かつまた最早巨匠と言っても過言ではないガス・ヴァン・サント(Gus van Sant)。確かに見事な作品で、これは必見だろうと思う。
題材はマイケル・ムーア(Michael Moore)監督のBowling for Columbineと同じく1999年にコロラド州コロンバイン高校で起きたあの銃乱射事件。描き方は正に対照的で、高校生達が送っていた静かな日常を何となく庵野秀明的なタッチで描きつつ(電柱(?)といいピアノといい…)、やがて起きることになる殺戮も、北野武映画の如く感情を押し殺した何とも静かな表現形式で描写する。
敢えて素人にアドリブで台詞を喋らせることによって表現した平凡な日常が、銃器によって完膚無きまでにぶち壊されて地獄へと一変する様が見事に表現されていて、他国で起きた事件であるにも関わらず「なるほどそういうことなのだな」、と妙に納得してしまった。
この映画がさりげなく表現しているように、イジメだの、通信販売で大量殺戮兵器が買えてしまう環境だの、殺人TVゲームがこの事件を引き起こした、と言うことは容易いけれど、この監督はそういう表面上のことも描きつつ、もう少し深く、少年達の持つ心の闇のようなものを表現しようとしているように思った次第。それは実際問題大変捉えにくいものでありかつ言語化しにくいものである訳で、同監督を含む製作者達の呻吟振りが感じ取れた。要は鑑賞者も一緒に考えて下さい、ということなのかも知れない。以上。(2005/06/09)