島田荘司著『ハリウッド・サーティフィケイト』角川書店、2001.08
「名探偵・御手洗潔」シリーズの主要登場人物にしてハリウッド女優であるレオナ・マツザキを主人公とする、本格ミステリ仕立てのクライムないしはハードボイルド・ノヴェル。ハリウッド映画業界周辺で連発する猟奇殺人その他。裏で売買されるその現場を撮影したヴィデオ・テープ。あるいは臓器移植医療を行なう非合法組織の影等々。LA在住の島田荘司がつぶさにみたアメリカ社会の姿を克明な形で描き出しつつ、御手洗潔もさりげなく登場させた1,700枚の巨編である。全体を通読して、これでは「ユダヤ人差別」なのではないか、とかそもそも「女性蔑視」ではないか、という気もしないのではないのだが、どうやら続編が登場し、その辺は解消されていく気もするので余り突っ込まないことにしたい。(といって、すでに突っ込んでしまったけれど…。)最初から犯人らしき人物として登場するイアン・マッキンレー(いかにもケルト系の苗字!)が語ったという設定のケルトの神話ないし伝承が主張低音を奏で、作品に深みと奥行きを与えている、ということも述べておきたい。以上。(2002/09/24)