Roy Wagner著、山崎美恵・谷口佳子訳『文化のインベンション』玉川大学出版部、2000.1(1975)
税別4,000円は高い。「インベンション」ではなく「インヴェンション」とすべき。訳がこなれていない。等々、どうでもいいことに文句を付けたくなるのだけれど、それは兎も角も、本書は方々で頻繁に引用されてきた人類学における基本的文献の本邦初訳である。有り難く、拝読させて頂きました。さて、著者の言いたいことは極めて単純で、要は「文化とは発明品である。」という事。それだけでは益体もないのだけれど、著者は自身がフィールド・ワークを行ったダリビの社会とアメリカ合州国を対比させつつ、文化の発明の諸相を描き出そうとしている。ちなみに、「インヴェンション」と言えばJ.S.Bachなのだけれど、本書における著者の記述の仕方は正に対位法的である。ところで、ダリビ民族誌は同著者の前著になっているのだけれど、本書はそれを読んでいる事を前提にしているようで、これを読んでいない読者にはやや不親切なような気がする。そもそも、アメリカ社会についても不案内な日本の読者にとっては、途轍もなく読み難い本なのではないかと思う。少なくとも、私にとっては極めて読みずらいものであった。こうして、翻訳という作業が孕む問題点が浮き彫りになってしまうのだと思う。誠に、難しい。(2000/04/23)