Alan Walker & Pat Shipman著、河合信和訳『人類進化の空白を探る』朝日選書、2000.3(1996)
古人類学の好著である。何しろ、翻訳がとても良いのであっという間に読める。著者の一人Alan Walkerは本書に登場する「ホモ・エレクトス」(訳者によれば、「ホモ・エルガステル」とするのが正しいらしい。)である「ナリオコトメ・ボーイ」の化石の発見グループの中心的人物。本書の記述は、同化石に関する解説がかなりの部分を占めているけれども、19世紀末のピテカントロプスの発見から、近年の各種新事実の発見まで、時代を画期する発見についての記述が、発見者ないしはスタッフ達の諸々のエピソードを交えながら、時系列的に、網羅的に、そして何よりも極めて懇切丁寧に行われている。古人類学の入門書として、大いに活用されるべきではないかと思う。また、扱われているテーマは、歩行、道具の使用、食生活、社会性、言語の使用、性の分化等々と極めて多岐にわたっており、それぞれにおける要を得た解説は誠に含蓄に富むものであった。早速授業で使わせて頂きます。(2000/05/05)