大槻ケンヂ著『くるぐる使い』角川書店、1998.1(1994)
「筋肉少女帯」のヴォーカリスト・大槻ケンヂの「超常現象青春小説集」(帯より)である。表題作「くるぐる使い」に登場する「くるぐる」とはシャーマンの一種であり、もう一つ「憑かれたな」は文字通り憑依現象を扱っていて、この両作品はシャーマニズムや憑依現象の研究をしている私にもかなり示唆的なものであった。「春陽奇談」は近頃の「キレル」中学生を予見してしまっている作品であるし、故・山田花子の漫画にインスパイアされたという「のの子の復讐ジグジグ」は相変わらずやむことのない「イジメ」問題の出口のない陰々滅々さを笑いによって何とか昇華させようという気概に満ちた傑作である。本書を読みつつ、同じ苗字を持つ早稲田大学教授を思い出していたのだが、大槻ケンヂはそのおどろおどろしい歌詞や著述活動において取り扱っているテーマ群の禍々しさに相反して、実は同教授と同じくらい近代合理主義的な感覚を持っていることにあらためて気付かされた小説集であった。(1998/04/22)