小熊英二著『<日本人>の境界 沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮 植民地支配から復帰運動まで』新曜社、1998.6
火曜日にようやく読了。なんだかんだ、読み始めてから3週間位かかっている。忙しかったせいもあるけど、何しろ分厚い。本編が667頁に注・あとがきまで入れると772頁もある。しかも、斜めに読むには余りにももったいない内容である。久しぶりに熟読させられました。知らないことだらけだしね。原敬が台湾統治において果たした役割だの、戦前に「朝鮮生まれの日本人」代議士が存在していたことだの、沖縄では復帰前には「日の丸」・「君が代」が「本土」以上に持ち上げられていたことだの、こんな事は社会科で習わなかったぞよ。私は「教科書」なんて読んだことが無いので知らないが、こういう話がいわゆる「自由主義史観」とかなんだかを唱えている人達のいう「教科書に書かれていない歴史」ってことなのかな?多分違うんだろうな。それはともかく、最後に出てくる「有色の帝国主義」というコピーはオリジナルだろうか。そうだとしたら、これは近代の一側面を照らし出す有力なタームとして流通していくのではないかと思う。戦後の話が沖縄に限定されていたのが残念といえば残念であるけれど、戦後における、「在日」であるとか、「アイヌ」であるとか、「外国人労働者」、さらには「被差別部落民」のような<境界>におかれた人々(こういう書き方がまた、<境界>を作ってしまうことになることは自覚している。小熊氏がこれらの人々を扱えなかったのはその辺を考慮してのことなのかも知れないなどと、邪推したりもする。)についてもまた別の論考を用意して頂けると大変嬉しいように思う。勝手な注文ですが。しかし、勉強になったなあ。(1998/11/21)