Jean-Pierre Jeunet監督作品 UN LONG DIMANCHE DE FIANCAILLES
邦題は『ロング・エンゲージメント』なのだが、元々のタイトルは上記の通り。engagementという語はフランス語にもあって(アンガージュマンと発音する。)、哲学用語としては「投企」などと訳されていたと思うのだが、それは兎も角。本作はLe Fabuleux Destin d'Amélie Poulainという大変な傑作を産み出したJean-Pierre Jeunet監督が再びAudrey Tautouを主演女優として起用した、ワーナーというハリウッド資本によって製作された超大作、ということになる。
時は20世紀初頭。第1次世界大戦の最中、自らの意志で身体を損傷することで除隊されようとし軍法会議にかけられた5人の兵士の処遇及び行方を巡っての諸々の謎と、それを解き明かしそのうちの一人である生存不明な幼なじみにして婚約者のManech(Gaspard Ulliel)を見つけようとするMathilde(Audrey Tautou)その他の活躍を描く。
中心的なプロット自体は単純なのだが、一種群像劇となっていてサブ・プロットとの絡み具合それなりに複雑。語り口も時間が前後する関係でやや馴染みにくい所もある。そんな訳もあって、日本国内では同監督による前作ほどの興行成績はあげられていない模様。やや致し方ない面もある。
いずれにせよ、膨大な制作費をかけた本作品は、Jeunet監督が巨匠への第1歩を踏み出すことになった作品として記憶されるべきものだろう。前作のパロディ的、というよりこの人独特の語り口を散りばめつつも(思わずニヤリとさせられる訳だが)、映画の巨匠達が創りだしてきたある種の「普遍性」を醸し出すことに成功していると思う。今後巨大資本に取り込まれるのは必至な状況の中で、それでも尚、この人がその作家性を失わずにどこまで進めるか、という辺りが、誠に興味の尽きない点である。以上。(2005/03/30)