笠井潔著『魔』文藝春秋、2003.09
『別冊文藝春秋』に1997-8年にかけて掲載された「私立探偵・飛鳥井」ものの2中編、「追跡の魔」「痩身の魔」を中心に、巻末には本人によるエッセイや本人へのインタヴュウ、佳多山大地による笠井潔論などが詰め込まれた書物。
「追跡の魔」はストーカー、「痩身の魔」は拒食症および外国人労働者問題、といった具合に1990年代の社会問題を織り込んだ社会派ミステリと呼んでもおかしくはない作品群で、これまでの笠井作品とはやや一線を画する。付け加えれば、全体を貫くハードボイルドな雰囲気もまた、これまでの笠井作品とはひと味違ったものである。
実は3連作になる予定だったのだが3作目が長くなりすぎて一冊本になりそう、と本人が述べていることもあり、それがいかなるものになるのか、首を長くして待つ他はない次第なのであった。(2004/02/17)