士郎正宗著『攻殻機動隊2』講談社、2001.06
1991年刊行の、誠にエポック・メイキングなコミックであった『攻殻機動隊』(講談社)からリアル・タイムで早10年、前作の終わりで電子ネット内の「自称知的生命体現象」と融合した「公安9課」=「攻殻機動隊」所属の主人公・草薙素子は、その後「4年5ヶ月弱経過した」時期に起きる一連の出来事を描く本作においては「ポセイドンインダストリアル社・考査部長」・荒巻素子として登場、現実世界とヴァーチュアル世界を股に掛けた八面六臂の大活躍その他を繰り広げる。

サイバー・パンク・コミックというカテゴライズは間違いではないはずのこの作品が、一連のサイバー・パンク作品のご多分に漏れず「宗教」をメイン・モティーフにしていることは、前作同様なのであるし、そういうことはよく見かける光景にさえなってしまった状況なので、別にここで特にどうこう言う事柄でもない。本作品が再びエポック・メイキングなコミックに仕上がっているのは、内容がどうこう、というよりは、特にそのカラー・ページにおける、CGを駆使することによってなされたコミック史上における新たな表現手段の確立、ということになるだろう。一体幾らかかったのか、と問いたくなるほどのとんでもない画質・画面構成には、ただただ驚くばかりなのであった。

なお、さほどのインパクトを感じ得なかった本作品の中身についてここで深く触れる積もりはないのだけれど、端的に言って、やや破綻気味、といったところだろうか。特に、頭の方で登場する「ドクター」というのが、何のために出てきたのかが良く分からないし、本作品のメイン・プロットにおいて最も重要なアイテムである「ラハムポルト博士名義の小さなファイル」の入手手段が余りにも作為的なのは否めないところ。冒頭部と、巻末部が、全体を説明しているようで実のところそれが極めて分かりにくい、というのも問題点として挙げておきたいところである。ちなみにこの辺の事柄は、どこかのBBSでも議論されていることだろう、ということを述べて終わりにする。(2001/07/18)