Baz Luhrmann監督作品 Moulin Rouge
オーストラリア出身の鬼才Baz Luhrmann監督による、Ewan McGregor、Nicole Kidman主演の破天荒系ミュージカル。舞台は1899年のパリ。誰でも知っている有名なクラブ兼娼館であるMoulin Rougeに勤務する結核で余命いくばくもない娼婦Satine(Kidman)に恋するボヘミアン志向を持つ作家の卵Christian(McGregor)と、同じく彼女を我が物にしようとする公爵(Richard Roxburgh)との確執とその顛末を描くメロ・ドラマ。
今時これはないだろう、というお話なのだけれど、それでもこの作品が鑑賞に値する作品足り得ているのは、20世紀に作られた膨大な数のポップ・ミュージックの、大胆なる引用と、その引用の仕方の面白さにある。何しろ、原曲はほとんど原型をとどめないまでに変奏され(まあ、何とか判別がつくものが大多数だったけれど。)、混合されているのだが、それでもなお歌詞自体は手を加えられておらず、そのまま物語にさしたる違和感なしに溶け込まされているのだ。よくもここまでやった、大したものだ、とつくづく感心させられた次第。(ついでだけれど、E.McGregorの歌唱力に驚嘆したことも付け加えておきましょう。部分的にはElton John本人が歌っているのかと思ったほどです。)
引用された楽曲が余りにも膨大なのでここでは敢えて示さず、それは同映画の公式サイトを見て頂くとして、最後に述べておきたいのはこれまた破天荒なWilliam Shakespeare's Romeo & Juliet(1996)を撮ったLuhrmann監督が、John Madden監督のShakespeare in Loveにおけるような、すなわち劇作家となった青年と彼が作る劇作を演ずる女優との恋、というモティーフをサクッと援用している点。オリジナリティなんてものはいらない、とでも言いたげなこの監督、次はどのようなブリコラージュを見せてくれるのかが誠に楽しみである。(2001/12/10)