中島智著『文化のなかの野生』現代思潮社、2000.3
「造形作家」である著者がアフリカ、沖縄、スペイン、日本、現代美術をフィールドとして綴る精神文化論。「シャーマニズム」に関する記述が豊富で、特に「シャーマン」をアーティストとして捉える視点には共感する。また、「シャーマン」の経験その他は結局の所語ることの出来ないものであり、それは本書の終盤に登場する「私美術」についても同じ事であり云々、というのは、本書を読む限りにおいては、「その割には、随分と饒舌な…。」である。語り得ない、と言いながら強迫神経症的に語りまくる他はないかに見えるこの著者には寧ろ親近感を覚える。この人のアカデミズム批判や研究者批判の文脈は頂けないのだけれど(要はスタイルの違いなのです。)、語り得ない中核(そんなものがあるとしてだけれど…。)の周りで言説なりシニフィアンの戯れなり造形作品なり何なりを生成し続ける他はない点で、私にしても、中沢新一(本書におけるこの人の影響は極めて多大なものがある。もう一人は私も尊敬してやまないG.Batesonですね。)にしても、中島智にしても、結局の所同じ作業(やや文脈はずれるけれど、もう一つこの3人に共通するのは、フィールドにおいて観察のみならず何らかの実践的行為を行っている点である。)を行っている様な気がするからだ。ちょっとおこがましいかもしれないけれど。文献注のいい加減さ(発行年がない。)、フィールド・データがエッセイ的な記述になっているせいで引用がし難い、話がやや抽象的過ぎる(しかも、反復が多い。)等々の細かな(大きいって?!)瑕疵を除けば、極めて刺激的な書物であった。是非御一読を。(2000/06/24)