山口雅也著『日本殺人事件』角川文庫、1998.5(1994.9)
青木保の上掲書とあわせてお読みいただくと面白いのではないかと思う。本作品は、山口雅也が得意とする、ある論理構造を持つ世界を設定し、その世界で起きる殺人事件とその世界なりの解決を描く、というものになっているのだが、ここで設定されているのが、ある「アメリカ人」作家によって、我々「日本人」から見ればそれらが偏見と思いこみであるとはっきり指摘しうる情報によって再構成された「日本」なのである。まあ、ある意味ではいわゆる「オリエンタリズム」への揶揄または批判とも取れるのだけれど、もっと正確に言うなら、パロディということになるのだろう。これはあくまでもエンターテイメント小説なのだから。ただ、青木の上掲書に引き続いて読んだがために、これもまたある意味で「逆光のオリエンタリズム」の文脈で語られるべきテクストなのかな、などと考えてしまった次第である。(1998/06/02)