竹本健治作『入神』南雲堂、1999.9

本欄にコミックが登場するのは初めてのこととなる。そのうち『シャーマン・キング』についてもコメントするのでご期待下さい。さて、東洋大学出身のミステリ・SF作家竹本健治の漫画家としてのデビュー作となる本作品は、『風刃迷宮』での予告の通りの「姉妹編」とも見られなくはないのだけれど、同書において残された謎についての言及は一切なされていない。何しろ、この作品、純粋な「囲碁漫画」なのである。勿論、登場するのは牧場智久、武藤類子をはじめとする同シリーズの面々なのだけれど、描かれるのは桃井四段との対局を中心とした囲碁ネタのみ。あれもこれも入れたい、という大学入試の小論文だの修士論文(自分のことか。ハハハ。)だのに見られがちの浅はかな欲望を無視した竹本の英断に取り敢えず拍手を送りたい。大人なんだから当たり前かも知れませんけれど。しかし、竹本氏、いかんせん画力がありません。デッサンが狂いまくっているし、空白部分が多過ぎる。さらに言うと、ネームのフォント選択も何だか不自然だし、今時同人誌でももっと次元の高い事をやっているのではないかと思う次第。しかし、装幀が京極夏彦だったり、あるいはアシスタントにずらりと並んだ錚々たる顔ぶれを見ると、何だか感動してしまう。一例を挙げると、綾辻行人、我孫子武丸、大森望、小野不由美、島田荘司、谷山浩子、法月綸太郎、麻耶雄嵩、山口雅也等々。これだけで、得した気分になります。ということで。(2000/02/15)