Joy Hendry著 桑山敬己訳『社会人類学入門 異民族の世界』法政大学出版局、2002.08(1999)
英国出身で、日本におけるフィールド・ワークもこなし論文・著書を多数公表してきた人類学者Joy Hendryが書き下ろした英国式「社会人類学」の文字通りの入門書にして教科書である。教科書として用いるには3,800円という価格はややキツイものかと思うのだけれど、贈与交換・儀礼・呪術と宗教・法・政治経済・家族親族等々、20世紀における社会人類学あるいは文化人類学の成果をほぼ網羅し、しかも事例と分析とをうまく結合させつつ極めてコンパクトに要領よくまとめていること、そしてまた日本の事例が数多く取り込まれているのでこの国で社会人類学あるいは文化人類学を学ぼうとするものへの導入として用いるには誠に適当であること、更には英国人によって書かれたものであることから日本の社会や文化への視座がより客観的になっているのではなかろうかということ等々といった、利点・美点を数多く挙げられる書物であることも事実なのであり、値段に見合った実り多き読書体験をお約束できる内容となっている。取り敢えず、紹介まで。(2003/04/24)