Richard Schechner著、高橋雄一郎訳『パフォーマンス研究−演劇と文化人類学の出会うところ−』人文書院、1998.6(1997)
1960年代以来、実験演劇ないしパフォーマンス界をリードして来た内の一人と言って良いだろうR.Schechnerの学術論文集。儀礼・演劇・パフォーマンス・シャマニズム・植民地主義等の研究に携わる者にとっての必読書ではないかと思う。扱われている事例はインド・ケーララ州における「アグニチャヤ」の「映画化」作業、アメリカ・プリマスの「復元村」、これまたインド・ラームナガルにおける「ラームリーラー」、インドネシア・ジャワ及びアメリカ・アナーバーでの「ワヤン・クリ」、アメリカでのネオ・パラ・シャマニズムの動き等々。ポスト・コロニアリズム、カルチュラル・スタディーズ、「伝統の発明」論等を踏まえつつ、人類学等における一連の儀礼論の延長線上に独自で構築したパフォーマンス理論を主軸として、極めて広範な議論が展開されている。25頁で「ヒューバートとモース」と印字してしまうという些細な間違いをしているけれど、翻訳も見事。やや値段は張るとは言え、上記のような研究者のみならず、一般読者にも是非とも読んで頂きたい書物である。以上、極めて簡単な紹介しかしていないことを恐縮しつつ終わり。(2000/03/06)