中野毅他編『宗教とナショナリズム』世界思想社、1997
本書は、1994年に行われた「宗教と社会」学会第2回学術大会での同タイトルのシンポジウムを元にして、より広範な地域・宗教を網羅しつつ、同時に各章では各論者が具体的な事例の緻密な検証を行うことによって、今日の日本において西欧のカルチュラルスタディーズやポストコロニアル文化批評の輸入・解釈・批判等を通じて形成されつつある宗教研究やナショナリズム研究の一大潮流を汲み上げながら、「宗教」と「ナショナリズム」の微妙な関係にメスを入れたものである。序文でも述べられているが、イスラム教とナショナリズム、あるいはジェンダーとナショナリズムの関係を巡る問題が扱われなかったのは誠に残念であるが、「ナショナリズム」を巡る問題を深く追求したことがない私にとっては、本書における各論者の議論は極めて示唆に富むものであった。(1997/7/14)