大越愛子著『女性と宗教』岩波書店、1997
本書は、女性と宗教の関係について、特にフェミニスト神学に端を発し、その影響を受けたフェミニズムの立場に立つ宗教研究が明らかにしてきた様々な宗教の持つ性差別性、抑圧性を浮き彫りにすることを目指したものである。もちろん女性と宗教の関係はその差別性のみにあるわけではなく、そうした批判は当然あってしかるべきであるが、著者自身もあとがきでその点に触れている通り、今日のフェミニスト(あるいはそうでない人々も含めて)の多くが持つべき問題意識の一つとして顕在化してきたような、救済の名を騙った差別・抑圧を暴き出すことや、そうすることによってさらには宗教を被差別・抑圧者の手に取り戻すことの重要性を示すことが本書の目的である以上、それは現時点の戦略として真っ当なものであろうと思う。(1997/7/14)