Brian Aldiss著 中俣真知子訳『スーパートイズ』竹書房、2001.04
Steven Spielberg(実はこういう綴りだったのです。「スピールバーグ」と発音すべきですね。)が監督し、ほんのつい昨週日米同時公開された映画『A.I.』の原案を含む、英国生まれの偉大なるSF作家Brian Aldissの短編集である。

爆発的なヒットとなるであろうこの映画だけれど、本書末に収められたAldiss自身が書いた「スタンリーの異常な愛情―または私とスタンリーは如何にして『スーパートイズ』を『A.I.』に脚色しようとしたか―」というテクストによれば、元々はこの映画、Aldissによる1969年発表の短編'Supertoys Last All Summer Long'を読んだ故Stanley Kubrickが、同作品を元にしたより大きな作品の映画化話をAldissに持ちかけ、二人はその後共同作業によってアイディアを煮詰めのだけれど(1968年に公開されたArthur C. Clarkeとの共同作業による記念碑的映画2001: A Space Odysseyと同じように、ということです。)、その後のすったもんだで結局映像化作業はなされず、お蔵入りとなりかけたところを、今度はSpielbergがこの話に乗っかり、それに応える形でAldissは先の短編に続けて2本のこれまた短い作品を付け加えることで「スーパートイズ三連作」を完成、この原案に基づいてSpielbergが最終的に映画を完成させる、という30年にわたる長い長い映画人とSF作家の共同作業の成果、ということになるわけだ。

そういう舞台裏も面白いのだが、SF小説の読者でもある私にとっては、そもそも「スーパートイズ三部作」の後半2編のみならず、本書に収められた大部分の作品が未発表(英語圏ですら、という意味です。)であるという点こそが重要なのである。確かサンリオSF文庫による翻訳版刊行が中途で途絶したと記憶するAldiss作品が(中古本はものすごい値段で売っている。)、あたかも1980年代になってから、Blade Runner(1982)という映画の成功でその原作者Philip K. Dickの作品群が再評価され、その翻訳版刊行作業が一気に進んだのと同じ経緯を、辿ることを密かに期待する次第である。(2001/07/05)