ところで、私はこの人の本を殆ど読んでいないのだが(これで2冊目。)、今後も恐らく接する機会は少ないだろう。理由は簡単である。それは即ち、文章が余りにも拙(つたな)い、ということ。何しろ、読んでいて恥ずかしくなってくるのだ。私にはこういうのが最も耐え難い。細かく言うと、地の文と台詞の部分の文体位はきちんと書き分けて欲しいし、更には、書き手(超越的な立場に立つ物語の記述者。)と語り手(一人称で語り紡ぐ物語内存在。)の交錯は誠に見苦しい。他にも、〈長過ぎる〉(上下二段組で488頁もある。)、だの、〈登場人物が幼稚過ぎる〉、だのといった難点もあるのだが、この位にしておく。
蛇足になるが、「チグリス」というカタカナ表記は、余りにも広く流通しており、教科書でも用いられている程なのけれど、恐らくは「ティグリス」の方が正しいと思う。但し、現地(イラク周辺)でどう発音されているのかは不明である。英語では「タイグリス」と発音する。「ユーフラテス」については問題ないだろう。まあ、これは新井素子の責任ではない。英語圏に行ったら、間違っても「チグリス」などと言わないように心掛けねばならない。(2000/12/23)