赤坂憲雄著『東北学へ 3 東北ルネッサンス』作品社、1998.6
前掲の『漂泊の精神史』で提示された「いくつもの日本」の、「北へ/北からの掘り起こし作業」(p.353)として進められている「東北学」シリーズの序説となるらしい部分の第3弾である。『東北学へ 1 もう一つの東北から』は「東北学」がいかなるものであるかを示すべく著されたエッセイ群、『東北学へ 2 聞き書き・最上に生きる』は赤坂がここ何年間かの間に「マニュアル」なしに取り組んだ聞き書きを集めたものであった。そして今回は3部作の一応の締めくくり、ということになるのだろうけれど、前2作に比べ、どうも書物としてのバランスに欠けているように思う。第一部「森と野はらと畑の世界」は佐々木高明等の照葉樹林文化論や焼畑文化論がほとんどそのまま踏襲されていて余り新味はないし、第2部「それぞれの帰郷の時代」は新聞その他にやや粗雑に書き散らされたテクストを並べたものに過ぎず、『1 東北ルネッサンス』で述べられていることに何かが付け加わったり、新展開を示すようなこともないし、ましてや全体の総括になっていないところが非常に気になった。ちなみに、この3部作の完全な書評は来春刊行予定の『白山人類学 第6号』に掲載する予定なので、ご期待の程。そういうこともあって、今回はごくあっさりと紹介するにとどめた訳である。以上。(1998/11/04)